 声明「死刑執行に抗議する」
声明「死刑執行に抗議する」
※英訳版が更新されました。
English translation updated.(8.13)
死刑執行に抗議する
本年6月27日、東京拘置所で白石隆浩氏の死刑が執行された。鈴木馨祐法務大臣は、通常国会の会期終了後の 23 日に、死刑執行命令書に署名したことを明らかにした。国会での審議(国政調査)を避けるようなタイミングで執行されたことになる。また2年11カ月前に秋葉原事件の加藤智大氏が死刑執行されたことから、執行のない状態が 3 年以上続かないように意図したと見られる可能性もある。しかもこの間、各界の有識者によって構成された「日本の死刑制度を考える懇話会」(座長・井田良中央大学教授=元法務省法制審議会会長)が、現行の死刑制度の問題点を指摘し、国会・内閣に、死刑制度のあり方を検討する公的な機関の設置を提案していたにもかかわらず、完全に無視された。
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日本国憲法は、死刑確定者であっても、「すべての基本的人権の享有を妨げられない」(11 条)、「個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の利益に反しない限り、立法その他の国政上で、最大の尊重を必要とする」と定めている(13条)。ところが、執行の実態は旧態依然で、執行の当日告知によって家族との最後の交流も絶たれ、執行方法の妥当性にも疑いがあるにもかかわらず、何の反省も説明もない。
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死刑事件の手続きも、通常の犯罪に対する刑事手続きと区別はなく、デイビット・ジョンソン氏の『アメリカ人の見た日本の死刑』(岩波新書・2019年)が指摘するような死刑冤罪を防ぐためにアメリカで取られている厳重かつ丁寧な刑事手続、すなわち日本の憲法 31 条の「適正手続(デュープロセス)」をさらに手厚く保障する仕組み(スーパー・デュープロセス)を配慮する兆しすら見られない。
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加えて、死刑執行命令書には、法務大臣・法務副大臣のほか、事務方の責任者として事務次官、官房長、刑事局・矯正局・保護局の長などが署名することになっている。他方、その命令書のあて先は、拘置所の存在する高等検察庁の検事長とされている。6月26日に、発令日未定のまま、事務次官は東京高検検事長に就任し、その跡を刑事局長が就任するという人事異動が新聞に発表された。その後、7 月18 日に異動が発令され、異動前の先任者に執行命令が下され、執行後に異動が完了するという流れが明らかになった。このような人事の流れは、一見して不明瞭な印象を与える。 法務省は、世界 140 カ国以上で執行されていない制度を、わが国独自のメリットがあると言うなら、きちんとした説明責任を国会開会中に尽くすべきである。
2025年7月22日
国際人権活動日本委員会
議長代行・新倉修
事務局長・松田順一


